糖尿病性腎症

 腎臓の主要構成組織であり、また、老廃物排泄という腎臓の最大の機能の担い手である糸球体の血管障害に起因する障害。血糖コントロールが不良であれば、通常、糖尿病発症5−10年で患者さんの約20%が第3期腎症(顕性腎症)に陥る。進行すれば腎不全に陥り人工血液透析が必要となる。現在わが国では新規血液透析導入者の約30%が糖尿病性腎症である。遺伝的な要因も腎症の発症進行に重要で、いくら血糖コントロールが悪くても腎症を発症しない患者さんもおられます。ただし、現在の医学では腎症を起こしやすいか起こしにくいかを前もって知ることは不可能です。

病期の分類と治療法

第1期(腎症前期):糸球体の中では高血圧になっていると考えられるが、現在の一般的な検査方法で検出できるような腎障害が認められない時期。厳格な血糖コントロールが有効。

第2期(早期腎症):精密な尿検査でわずかな蛋白尿(微量アルブミン尿)が認められる時期。全身の血圧が上昇し始める。厳格な血糖コントロールおよび血圧の管理が有効(血圧は130/85 mmHg程度に)。アンギオテンシン変換酵素阻害薬が有用。

第3期(顕性腎症):持続性蛋白尿(簡易蛋白尿検査で異常がわかる)が認められる時期(前期)。さらに進行すると、糸球体機能(老廃物排泄機能)が低下する(後期)。高血圧を伴いやすい。厳格な血糖コントロールおよび高血圧の治療(血圧は130/85 mmHg程度に)とともに食事中の塩分・蛋白質量を制限する(標準体重1キログラムあたり食事蛋白0.8グラム程度)必要がある。アンギオテンシン変換酵素阻害薬が有用。この時期になると腎症の進行を完全に防止することは困難となる。

第4期(腎不全期):腎機能障害のため一般的な血液検査で異常が認められる時期。尿蛋白も増加し血液中の蛋白質が低下する(ネフローゼ症候群と呼ばれる)ことが多い。降圧療法(140−150/90−95 mmHg程度に)、塩分制限、低蛋白食が必要。過激な運動は不可。透析療法導入の準備も必要となる。

第5期(透析療法期):腎機能が廃絶し慢性血液透析療法に導入された時期。

糖尿病性網膜症 糖尿病性腎症 糖尿病性神経障害
 糖尿病の合併症
糖尿病教室
成人病教室
健康倶楽部